ふれあいの友コラム

今かくあれど メイ・サ−トン(アメリカ・詩人)

今かくあれど メイ・サ−トン(アメリカ・詩人)

医者や看護婦の中には、大人の患者をまるで子供のように扱う人が居る。

立場特有の態度だと言ってしまえばそれまでだが、それを屈辱だと感じる患者が居ることは確かだ。看護される立場が絶対的な弱者であることを思い知らされる場面に多々出くわす。

アメリカの詩人であり、作家であるメイ・サ−トンの作品「今かくあれど」(みすず書房)より。

生きてホ−ムからは出られないという絶望的な前提、自由を拘束する『非人間的ル−ル』、『薬づけ』、「逆らうと『管理人の意地悪』と『懲罰』が待っている。

『老齢とは、ひとつずつ断念していくことだと、人は言う。』けれどもそれが一度に起こってしまうと異様だ。ホ−ムはまるで『独房に閉じ込められていることに似ている。死ななければ出れないのだから。』器に閉じ込められていると次第に気概を失っていく。そこには人間が破壊されていく場となる。

破壊を食い止めようと必死に戦う人間、又ごく普通の人間が管理される側と管理する側に立場が別れたとき、弱者と強者に振り分けられる、どうしようもない現実を見せ付けられる。そして『老いることでいや応なく弱者に下される残酷さ』。『こんな風にホ−ムで一生を終えるとは思っても見なかった。』と死んでいく老齢者。しかし最後の最後まで人間として尊厳を死守しようとする。追い詰められながらも自分であろうとする老齢者の願いは『生を納得できる形で締めくくりたいと願う人々すべての願いである。』

H24.04.15

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